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短編韓国ドラマ「死の賛美」は実話?感想・おすすめ度・あらすじ(後半ネタバレ注意)

昔から好きでYoutubeのミュージックリストに入れて聞いていた曲があります。
송하예(ソン・ハイェ)のStay with meという曲です。

メロディも声もすごくよくて、映像も一昔前なのかレトロチックで好きな雰囲気。ドラマか映画か知らんけどみきゃ…とずっと思いながらいつの間にか忘れていて、ふと数日前に思い出した次第です。

韓国語ではずっと題名を見ていたのに漢字がピンときていなかったんだけど日本語で見るとちょっとドキッとするタイトル「死の賛美

3話の短いドラマで、Netflixオリジナルシリーズです。イ・ジョンソクはこのドラマノーギャラだそうですね。

※後半ネタバレあります。結末から始まるドラマなので何も知りたくない方は前半もご注意ください。

あらすじ

ドラマの初めに表示が出てきますが「このドラマは一部フィクションです」 つまり一部は実話を元にしています

日本統治時代のお話なので、舞台は日本と朝鮮。日本語も結構出てきます。

結末を最初に見せていくスタイルのドラマで、一番最後の結末シーンが冒頭に少しあり、さかのぼって物語が始まります。

夜中、船でクルーが巡回をしているとどこかから音楽が聞こえてきます。(この曲が死の賛美です)クルーが音の聞こえる部屋に入ると、部屋はキレイに整理されていて誰もいません。

少しのお金と一緒に置いてあったメモには「申し訳ありませんが荷物を家に送ってください」と書いてあり、それを見たクルーは慌ててデッキに向かいます。デッキには誰もいませんが2つの脱がれた靴が置かれていました・・・・

タイトルとこの冒頭部分で大体の方は結末を理解するのではと思います。

主人公は
・キム・ウジン(イジョンソク):劇作家で舞台の準備中。ゆくゆくは家の会社を継ぐ予定。
・ユン・シムドク(シン・へソン):朝鮮初のソプラノ歌手で日本留学中。

この二人が日本で出会うところからドラマはスタート。だけど結末を見せられているだけに「なんでこの二人が?なにがあってどうなってそうなの!?」みたいな感じで最後まで一気に見ました。

世界観や感想

死の賛美

日本統治時代のお話ということで日本人が見ても面白い時代設定だと思います。このドラマでは日本を悪く仕立て上げるような印象は持ちませんでしたので、その点で不快になることはないと思います。

(日本軍人はすごい嫌な奴でしたが、いい日本人もたくさん出てきます。)

※日本人の役なのに韓国人が片言の日本語で日本人役をしているのも多くてそこはちょっとちゃんとしてよと思いましたが笑

登場人物たちは自由に日本と朝鮮を行き来する生活をしていて、なんだかすごく不思議でした。戦争中にしては服もすごくキレイなものを着ています。

日本の街並みがすごく味のあるレトロな感じで描かれていて、服装や髪型・街並み含めてすごくすきな世界感でした。レトロな感じ大好き。

細かい設定は置いといて、ドラマを見た感想としては「韓国の太宰治か!?」という感じ。(細かい設定は置いていて、です)でももっとキレイな世界。笑

人生に苦しんでる人とか死にたいとかちょっと思ってる人にはなるべく見ないでほしい、と思うくらい死を美しくポジティブな感じで描いています。

簡単に言えば美化なんだろうけど、当時、自分の気持ちだけでは人生どうにもならない部分もああっただろうから今とは違うし、しかたなくそういう選択をした人も多かったかもしれないですよね。それしか道がなかったというか。

この主人公2人は「有島武郎」という日本人作家に影響を受けるのですが、この人も恋人と心中しています。

ポジティブに美しく演出されている分、雰囲気としてめちゃくちゃ暗いドラマではないですが、見終わった後なんともズーンとしたもやもやが心に残りました。

でもストーリーは面白いし、せつない愛物語とか好きな人は好きだと思います。

おすすめ度・総合評価

総合評価 

本当は☆4つあげたいのですが、好みが別れそうでちょっとマイナスしました。

ストーリーはおもしろくて雰囲気や世界観は抜群です。ドラマというより映画っぽい感じ。

おすすめできるかと言われるとほんとに好みが別れそうでなんとも言えないです、、、コメディしか見ない明るいドラマが好きな人は苦手だろうし、切ない悲しい恋物語も行ける人は好きだと思う。

でも終わった後のズーンというか余韻は免れないと思います、ロスとはまた違う余韻。

私は2度目見る勇気があるかはわからないけど、見れてよかったです。イジョンソク大好きだし、私の場合ストーリーに加えて画のキレイさはかなり重要なのですが、そこが合っていました。

実話について(ここからネタバレあり注意)

主人公のキム・ウジンとユン・シムドクば実在した人物で写真なども残っています。

キム・ウジン ユン・シムドク

二人は同じ船に乗っていて一緒に行方をくらましたのですが、遺体は見つかっていないそう。「抱き合って飛び込むのを見た」と当時新聞では報道されましたが、実際は飛び込むところを見た人はいません。

遺体が見つかっていないので死んでいないとかイタリアで暮らしてるとかいろんな噂もあったみたいですが、シムドクが死ぬ前に大阪でレコーディングをした際、突然「死の賛美」を追加収録したことは1つの裏付けなのかなと思っています。

この歌はイヴァノヴィチの「ドナウ河のさざ波」 という曲にシムドクが歌詞を付けたもので、元々レコーディング予定になかったのに急遽追加したのだそう。

レコーディングが8/1で自殺をしたのが8/4。

しかもシムドクが日本に経つ日、見送りにきてくれた知り合いと”お土産は何がいいか”という話をしている時にシムドクが「死んでも買いますか?」と言ったそう。もちろん冗談のように交わした会話だったそうだけど、、シムドクが亡くなった数日後にお願いしていたお土産のネクタイはちゃんと届いたそうです。

映画でウジンには子供はいませんでしたが、実際には子供がいたそう。

色々調べてみたのですが、2人について明らかになってる事実は意外と少なく映画ではフィクション部分もかなり多そうですね。

シムドクが実際に歌った「死の賛美」は聞くことができますので、興味ある方はぜひ。下記リンクを開いて再生ボタンが2つあるうち下が死の賛美です。
こちらのリンクからどうぞ

ドラマ見た後に何回か聞いたのですが、すごく闇に引き込まれそうな声と音楽で私はもう聞けないと思います、たぶん;;w

歌詞もついでに紹介します(昔の言葉で和訳がむずかしいのでドラマから引用しました)

果てしない荒野を駆け抜ける人生よ
あなたの行き先はどこだろうか
うら寂しい世界、険しい苦界で
あなたは何を求めるのか

涙で作られたこの世
死ねば終わるのか
幸福を求める人生よ
見つけたのは虚無

笑うあの花と泣くあの鳥たち
皆が同じ運命を持つ
生に執着する哀れな人生よ
君はまるで刃の上で踊っているようだ

ドラマの中ではウジンと一緒に歌詞を作る演出になっています。

ネタバレ感想

どんな風に2人が2人の行く道を決めるのかがすごい気になりながら見ていました。

すごく雰囲気の良いドラマなのに「一緒に死のう」みたいな直接的な表現にはあまりにも似合わなくてそれはありえないと思っていたので、なおさらどんな表現をするのかもしくはその部分のセリフは省かれてしまうのかと考えていたのですが…

そのシーンのセリフがポジティブすぎてキレイすぎて一番印象的でした。

「もう休みたい、でもあなたが恋しくなると思うとこわくてできない」というシムドクに対して、

「有島武郎先生は自分に正直に生きるために死を選んだ。僕も自分に正直な人生を選ぶことにする、たとえ死ぬことになっても、だからシムドクも休んで、僕の隣で」

2人が死を口に出したのはこの時が初めてですが、2人ともすでに死を考えていたことが伺えますね。

シムドクは「もう休みたい」ウジンは「自分に正直な人生を生きる」という、なんともキレイな表現、、、

特にウジンは発想が斬新というか「自分が生きたくない人生を終わらせることが自分に正直な人生だ」という前向きな発想。実際の2人がこんな会話をしたかはナゾですが、このシーンを楽しみにしていた私には100点満点のセリフでした(なにさま)

この会話をしてからは2人は一番穏やかな幸せな表情で幸せな時間を過ごしたんじゃないでしょうか。

いくら一緒にいくと言っても結局は会えなくなるのにこわくないのかなと思ったけど、最後まで2人は穏やかで幸せそうでした。これで永遠に一緒にいれるという感覚なのかな。

私には一生わからないかもしれないけど;;とにかく最後まですごくキレイなドラマでした。

最初の方で太宰治みたいといったけど、映画「人間失格」よりもこっちの方が何倍も好きです。