韓国語

韓国人には自覚がない「文頭は濁らず文中は濁る」ハングルのナゾ。真相は!

韓国語を勉強すると必ず日本人がぶつかる壁だと思います。それは”同じハングルなのに場所によって違う発音に聞こえる”ということ。具体的には文頭(語頭)にあるときと文中(語中)にある時で違う発音に聞こえるということです。

何のことかわからない方に簡単に説明すると、例えば「두시」(トゥシ:2時)この語頭の두は「トゥ」に聞こえるのですが、「모두」(モドゥ:全部)語中に出てくる두は「ドゥ」に聞こえるんです!

ネットにもよく、「文頭では濁らず、文中だと濁って読む」とあります。ところが!

語学堂の授業で先生(韓国人)はそんなこと一言も教えてくれませんでした。もしそういうルールがあるなら、授業で発音を習うときに教えてくれるはずです。

濁らない=激音(투・카etc)と同じ発音になるってこと?いやそれも変。

しかも、韓国人にもゆっくりはっきり発音してもらえば文頭でも濁音に聞こえます。

 

なんだかおかしいゾと思い始め、きちんと調べることにしました。

もちろん先ほどのルールでも通じるとは思いますが、正しい発音のために勉強したいと思う方はぜひ参考にしてください。

 

韓国人に質問してみた

①トウミに聞いてみた

私のトウミ(韓国人大学生のヘルパーのこと)は関西弁まで使いこなす日本語ペラペラです。

私「例えば”가”。日本人には文頭だとk、文中にはgに聞こえるんだけど、韓国人にはどう聞こえてるの?」
トウミ「私には全部gに近く聞こえるよ。他の人にはどうかわからないけど…。先生に聞いてみた方がいいかも!」

なんと…やはり韓国人は意識してそうしているわけでもないし違いもわかっていないかもしれない。

②韓国人の先生に聞いてみた

こうこうこうで……と説明する。先生「え、質問の意味がわからない」だそう。。。

日本人から同じ質問受けたことあるだろうと思ってたけど、なさそうだ。

私「例えばこの時はkに聞こえるけど、この時はgに聞こえるんですけど…」
先生「本当に?ほら聞いて(発音してみせてくれる)同じでしょ?」
私「違います…(笑)」

先生も知らなかったことだから、調べてまた教えるねとのことでした。

やはり韓国人は何も意識していないし、全部同じ音のつもりで発音していることがとりあえずわかりました。

そして後日先生から回答をもらいました。(가を例にしています。)

  • 日本人にとって文頭は「か」文中は「が」に聞こえてるんだと思うけど、韓国人にはそれがわからない
  • 韓国語を日本語の”か”と”が”に置き換えることがちょっと違うと思う
  • 韓国語の「平音」の話し方がきちんとできていれば、日本人が思う”か”と”が”どっちであっても韓国人はわからないから大丈夫

大体こんなことを言われました。ためしに「감기」を「ガmギ」と呼んで先生に聞いてもらったら、「うん、合ってるよ」のことでした。

自分で調べてみた

何でこんなことが起きるか、原因がだんだん見えてきました。

  • 韓国人には濁音の概念がない
  • だから濁音で話したくてもできないし、聞き分けもできない
  • 文中は自然と濁音になる。(その方が言いやすいから)
  • 日本語・英語は「有声音・無声音」で言葉を区別するが、朝鮮語・中国語は気息音の有無で区別する。

最後がちょっとむずかしいですが、音の識別の仕方が違うらしいです。

◆日本語→清音・濁音・半濁音で発音を区別
◆韓国語→平音・濃音・激音で発音を区別

つまり、極端にいうと濁音かどうかは韓国語にあまり関係がない、音を区別しているポイントはそこではない、ということです。

日本語のルールだと違う音でも、韓国語のルールでは同じ音になる。

だから日本人にとってはわかりにくいんですね。日本語表記するときも
・비빔밥→ビビンパ
・비(雨)→ピ
と統一性がありません。ちなみに東京をハングルで書くと도쿄…不思議。

じゃあ가(平音)と카(激音)の発音をどうやって区別するのかですが、私が習ったのは「激音は顔の前にティッシュをぶらさげて、それがなびくくらい息出しながら発音する」です。と言うと力が入っちゃいそうですが、のどに力は入れず楽に息が出るイメージで。(力んでのどがつまる発音は까)

のどから楽にが出てるかどうかがポイントです。kahhhって感じで、明らかに日本語の「か」とは違います。

  • 平音(가):息が出ない、音程は低め
  • 激音(카):のどを楽に息を出しながら、音程は高め
  • 濃音(까):のどがつまる感じで強く、音程は高め

※音程が違うと発音が合っていてもイントネーションがおかしくなります。

文頭の가(平音)を日本語の「カ」のように発音すると多少息が出るため、카(激音)に近くなってしまう可能性があります。ひらがなを韓国語に置き換えてしまうと中途半端なんです。

だから가を発音するときは文頭でもガと発音する方が確実です。はっきりガと言ってしまっても韓国語ネイティブの人は違和感を感じません。ネイティブとの違いが気になる方は「カ」と言ってもいいでしょうが、息が出ないように注意する必要があります。

逆に카を発音するときは、日本語のカよりもかなり息を出すように努力する必要があります。

私が自己紹介をするとき「かよです」と日本語を話す時みたいに言うと韓国人はかならず「가요?카요?」と聞いてきます。中途半端でわかりにくいんでしょうね。

韓国語の有名なゆうき先生も、ツイッターでこんなことを書いていました。

ハングルをカタカナ表記にする際、平音はもう濁音でええんちゃうかと個人的には思ってる。「그래요」も99.99%「クレヨ」って表記されてるけど、「グレヨ」でええんちゃうのと。もちろん「音声学的見地から平音は語頭においては無声音として発声され…」と言いたいのは百も承知の上で。

極論を言ってしまうと「僕らの感じる違和感なんてこの際どうでもええのよ」ということを思う。実際韓国語ネイティブは「グレヨ」を「그래요」としてしか認識しない。「クレヨ」だと場合によっては「크래요」と認識される可能性が大いにある。

「자요」なんかの場合はもっと顕著。数人の日本語ネイティブに「チャヨ」と発音させて韓国語ネイティブにジャッジしてもらうと、「자요」に聞こえる人と「차요」に聞こえる人に分かれる。でも「ジャヨ」ならこれはもう100%「자요」なのだ。

もちろん音声学的には「グレヨ」と「그래요」はイコールではないし、「ジャヨ」と「자요」もイコールではない。しかしここで大事なのは「それでも通じちゃう」という事実。

逆に金閣寺に行きたい韓国語ネイティブが(原則どおり)「긴카쿠지」と発音した場合、日本語ネイティブは「金閣寺?銀閣寺?」と混乱するのだけど、最初から「킨카쿠지」と言えば、それは我々の耳には100%「金閣寺」として認識される。

日本語ネイティブの言う「金閣寺」と、韓国語ネイティブが激音で発音する「킨카쿠지」は音声学的にはイコールでないのだけど、肝心なことは「それはもう金閣寺としてしか聞こえないでしょ」という事実なのだ。

https://twitter.com/yuki7979seoul/status/1138592317068128256?s=20

逆に韓国人は濁音を聞き分けられないし発音も慣れてないので、日本語とか英語を勉強するときに苦労するらしいです。

日本語にも似たような現象があった

先ほど「文中ではその方が言いやすいため自然と濁る」と書きました。よくよく考えたら日本にも同じような言葉がたくさんあったんです!

山のようにありますが例えば、手紙。”て+かみ”だけど続けて読むと”てがみ”になりますね~

他にも、長靴・茶柱、お茶漬け・日差し・夜空・戸棚・鼻血・幸せ太り(笑)などなど。こうするようになった要因は多々あるんだと思いますが、要は「言いやすい」んじゃないか、と思います。

このことを「連濁(れんだく)」といいます。気になる方は調べてみてください。

ハングルのローマ字表記はどうなってる?

韓国では2000年にローマ字表記のルールが改訂されています。

細かいルールは難しいですがおおまかに言うと以下のイメージです。

〇2000年より前:英語話者に分かりやすい表記。
 釜山→PUSAN(主にマッキューン=ワイシャワー式)
 ※ハングルとローマ字が1:1で一致しない。ローマ字からハングルへ復元することができない。

〇2000年以降:音声に忠実でなく英語話者に分かりずらいが、ローマ字⇔ハングルへ転写できる。
釜山→BUSAN(文化観光部2000年式)

くわしく知りたい方はWikipediaでどうぞ マッキューン=ワイシャワー式 文化観光部2000年式

プサンなのになんでBUSANなのかは地味に気になっていましたが、こういうことなんですね。韓国人にとっては今のローマ字の方がきっとしっくりくるんでしょうね。

まとめ

  • 韓国人は文頭・文中とわけて発音しているつもりはないし、全部同じに聞こえている(濁音g/d/j/bだと思っている)
  • 韓国語は濁音かどうかで区別されていない
  • 韓国人は文頭で濁音ができず、文中では言いやすいため自然と濁音になっている
  • 濁ってないように聞こえても、平音(ㄱ・ㄷ・ㅈ・ㅂ)と激音(ㅋ・ㅌ・ㅊ・ㅍ)を同じように発音してはいけない
  • 韓国人は文頭でも文中でも平音(ㄱ・ㄷ・ㅈ・ㅂ)と激音(ㅋ・ㅌ・ㅊ・ㅍ)をしっかり聞き分けることができる
  • 文頭のㄱ・ㄷ・ㅈ・ㅂを濁音で発音しても韓国人は違和感を感じないし、その方が間違いはない。
  • 例えば”가”を日本語の「カ」で発音すると”카”に近くなる可能性があるのでしっかり、区別して発音する必要がある。(ㄱ・ㄷ・ㅈ・ㅂは息を出してはいけない)

結論:日本人にとって聞こえ方は違うが、文頭でも文中でも発音のルールは同じ。大事なのは濁音かどうかではない。

「카」は息を肺から出しながらいうカ
「가」は息を出さない”カ”または”ガ”。※”カ”と言うと息が出て카になる可能性があるので、文頭でもガというと間違いはない

ハングルとひらがなは全くのイコールにはなりませんので、そのことを念頭に置いて勉強してはいかがでしょうか。

 

私もこのことでずっとモヤモヤしていましたが、整理がついてとてもスッキリしました。

以上となります。

POSTED COMMENT

  1. あつこ より:

    なるほど!勉強になるわぁ

  2. Kayo より:

    >あつこさん
    ほんとですか?^^お役にたててよかったです!!

  3. ma mi より:

    私もずっと同じ事を思っていました!
    ありがとうございます。すっきりしました!

  4. Kayo より:

    >ma miさん
    私も韓国語を始めてからずっとモヤモヤしていたことでした!日本人はみんなぶつかりそうですよね。こちらのゆうき先生の一連のツイートも参考になるのでぜひ見てみてください^^https://twitter.com/yuki7979seoul/status/1138592317068128256?s=21

  5. 匿名 より:

    ありがとうございます^^