ベストセラーとなったこの本、図書館で予約しててやっと順番が回ってきました!30人待ちくらいで何か月も待った・・・
著者: チョ・ナムジュ
訳:斎藤 真理子
想像と違うしすごく読みやすい本
「フェミニストの本」として知っていたこの本。韓国で”フェミニスト”といえば活動が活発で一部過激な人たちもいたりするのですが、この本もかなり強めの?本というか男性をバリバリ批判する本なのかなって読む前は勝手に思ってました。
それで読むのも少し気が引けてたんですが、これだけ話題になってるので一度読んでみることに。
でも読んでみるとわかりますが、強いメッセージ性があるわけではなくごく普通の女性の物語です。言い換えると「あるある本」と言えるかと。
人に比べて特別ひどく性差別を受けた人とかではなく、ごく普通の女性の人生を描いた話なんです。これが意外だったのと同時にすごく読みやすい理由でもありました。
全部じゃなくても女性なら共感できるようなエピソードがたくさん出てきます。「これはちょっと違うな」と共感できない部分もあったけど、ほとんどは「あるあるだな」と思いました。
でも小説なのでキムジヨンの人生がただ描かれているだけで、いわゆる批判やメッセージのあることは書かれてません。「こうあるべきだ」「こうしなきゃいけない」とかの表現はまったくなくて、キム・ジヨンがどう生きてどう感じてきたかを読んで、あとは読んだ人が自分で考える本です。
男尊女卑なんてないと思ってた
私は生きてきて女性だからと甘やかされたことはあっても、差別やひどい扱いを受けたことはないと思って生きてきました。実際嫌な思いをした記憶はありません。
でもこの本を読んでみると、「言われてみるとこれって男女差別だ」ってハッとさせられる部分がありました。
特に家の中で起きることに思い当たりがあったかも。ちょっと前にTwitterで見たのですが、日本の中でも九州は家庭内での男尊女卑が根強いみたい。
当たり前と思ってたこと・何も考えずに受け入れてたことが冷静に考えるとおかしいって気付いたときの衝撃はなかなか強いです。
「女性だから甘やかされる」というのもただ楽をできると思えばよく見えるけど、「楽しなくていいから責任ある仕事や立場をまかされたい、活躍したい」と思う人にとっては逆に良くないんだということにも気付かされました。
似てても少し日本と違う部分
もちろん韓国なので日本の現状とずれる点もあります。私の考えでは、韓国では同じ年齢でも一世代くらいのずれがあると思った方がいい。
日本人がこの本を読むと「共感できる部分」と「これはないな」と思う部分が出てくると思います。
というのも、主人公のキム・ジヨンは1982年生まれの女性ですが正直82年生まれでこれかぁってちょっとびっくりもした点もあるから。
日本でも地域差があるかもしれないけど、私の感覚でいうと昔々にあったであろうと思われるようなエピソードや同じ80年代生まれとして私の親でさえこんな経験はないだろうと思うような内容も出てくるんです。
でも韓国では「これは私の物語だ」というような共感の声がすごく多かったらしい。
韓国はIT系もかなり進んでるし今の若い世代は日本となんら変わらない、むしろ進んでる部分もある。でも日本より戦争が終わるのも遅かったので、その分貧困が解消されるのも社会や経済が発展するのも日本より遅かったんです。
成長スピードがかなり速かったのですぐ日本に追いついたけど、そのスピードについてこれてない部分もあるのです。
それに加えて韓国には軍隊もあるから、男女問題は日本よりもっと複雑。
この本は、韓国がどういう国かを知る勉強にもなる本だと思う。
この本には出てこないけど一つ知っておいてほしいことは、今までの女性への待遇の反動で今の韓国では女性がめちゃくちゃ強くなってます。フェミニストの活動も活発だしむしろ男性が委縮してるようにも見えるほどで、また新しい問題も生まれてます。
女性への態度や発言にすごく気を遣う韓国人男性
韓国でベストセラーになった本ですが、韓国の男性からは被害妄想だとか批判も多かったと聞いてます。
Amazonのレビュー欄に韓国の方が書いたコメントに「こういった男性の批判こそが、この本がフィクションじゃないことの証明だ」という言葉がありました。一理あるかなと。
何度も言ってるように、この本は男性を批判するような表現はあまりないと思うのに男性が敏感に反応したことが正直意外でした。でも韓国では過激なフェミニストのために逆に苦労している男性がいるのも事実。
韓国社会の溝が深い問題だなと思います。実際私も韓国に住んでいるときに、(私の感覚からすると)異常なまでに女性に配慮する若い男性が多いことに気づかされました。配慮をしたり「失言」をしないように気を付けてる感じにすごくビックリもしたし偉いなとも思った。
女性の私でさえ、韓国の男性から「韓国の女性の前でそういうこと言ったらダメだよ」「そういうこと言うと韓国の女性はすごく怒るから気を付けて」って注意されたことがあるくらいです。ちょっと驚きませんか?
その発言が本当にダメかは置いといて、それくらい男性が気を使っているということです。
女性は共感できる、男性は勉強になる本
女性にとっては最初にも書いたように「あるある本」的に読める本だと思います。あるあるだけど、今まで気づかなかった視点や問題にも気付けるかもしれません。もちろん逆に共感できない部分もあるかも。
男性にとっては、「女性目線の人生ってこんな感じなんだな」と勉強になると思います。普通の女性なら当たり前すぎてわざわざ人に話さないようなことまで細かく書いてあるので、新しい発見がたくさんあると思う。
女性の私としては、男性にたくさん読んでほしいと思う一冊です。
私は男女のすべてを全く平等にすることは不可能だと思ってます。例えば、男性が子供を産むのは不可能だし、持って生まれた性質の違いもあるからです。
でも私は、それを男性が知ることは大事だと思ってます(逆もしかり)。女性にどんな苦労があるか知って配慮してもらえるだけで救われるからです。制度や仕組みが整えばなお良し。
逆にこういう問題に疎すぎる女性も読むべきだと思います。無意識に女性が男尊女卑に加担してる場合もありますので。
男女ともがこの問題に向き合って、男女ともがなるべく不利益を被らずに生きていけるような世の中になっていけばいいなあと思います。
10年経てばまた色んなことが変わるだろうし、そのときどんな世界になってるか楽しみです。